空気を読めばバンジージャンプだって跳べる
【沖縄おじさんの人生遍歴ブログ Vol.25】
工場に働いて半年後、部署の縮小に伴いおじさんは、兵庫県伊丹市の工場へ異動になりました
そこでは半導体の製造や検査を行なっていて、日勤と夜勤の二交代制シフトでした
人見知りな性格も手伝って、職場の人らには心を閉ざしていて、いつも一人で黙々と仕事をしていました
休憩時間には特に誰とも話さず、みんなの会話に聞き耳を立てては心の中で職場の人らにキャラやあだ名を付けてました
ある日の休憩時間のこと。「自分の事を面白いと思ってる明石家さんまの劣化版」社員が、他の人らを集めて何やら盛り上がってました
話を聴くと、琵琶湖にバンジージャンプができる施設があり、今度の休みにみんなで行こうとの事でした
おじさんの存在に気づいたその社員は、社交辞令的に「お前も行くか?」と声をかけてきたので「はい」と返すと、その場にいた全員が意外な顔でおじさんを見てました
これまでろくに会話に入って来なかった奴が、いきなり休みの日の遊びの場に参加するのが、さぞかし意外だったんでしょう
実はおじさんは、海や川で、高い場所から飛び込むのが大好きだったので、バンジージャンプはいつかやってみたいと常々思っていたのでした
そして当日、みんなで乗り合わせて今はなき「琵琶湖タワー」に向かいました
そこはかなりちゃっちい遊園地でしたが、逆バンジーや、長い紐で宙づりになってスイングする人間ブランコや、目玉のバンジージャンプといったなかなかスリリングなものもありました
逆バンジー、人間ブランコと回って、ついにバンジージャンプの番になりました。下から見上げるとかなり高く、饒舌だった人らもさすがに尻込みした様子で、誰もやろうとはしませんでした
「やっぱこれはさすがに厳しいかもなー。お前、やってみる?」と苦し紛れにおじさんに振ってきたので、「はい」と答え、またもや全員の注目を浴びたのでした
受付で2000円を払い、もしもの事があっても文句を言わない的な誓約書にサインをさせられ、説明を受け、階段を上っていきました
その日は風が強く、上に行くにつれて横揺れが激しくなってきました。係員のおじさんがボソッと「風強いな。大丈夫かな」と独り言を言ったのをおじさんは聴き逃さず、より一層恐怖感が増しました
そうこうしてるうちにスタート地点に着きました。高いところも飛び込みも得意でしたが、バンジーほどの高さになるとさすがに恐怖感はものすごくて、足が竦みました
やり方としては、手を頭の後ろで組み、「3、2、1、バンジー」のかけ声で前に倒れる、ただそれだけです
下で見守っている職場の人らが満を持して、「3、2、1、バンジー!」とみんなで合わせて声をかけてくれましたが、さすがに1回目では飛び出す勇気がなく、躊躇してしまいました
これはちょっと、さすがに無理かも…という気持ちが頭を過ったんですが、そこでふと、空気を読み我に返りました
職場では目立たない存在の脇役が、みんなの貴重な時間を使って跳ぶ跳ばないとグズグズするわけにはいかない。このままでは、バラエティ番組でひたすら引っ張って空気を悪くする芸人みたいになってしまうと
絶対に、跳ばなくては
そう決心し、2回目のチャレンジで見事、跳ぶ事に成功しました
下に降りると、みんな興奮した面持ちで
「すごいな!」「見直したよ!」と、おじさんを誉め称えてくれました
しかしそこは、心を閉ざしているおじさんです。どう返せばいいのかわからず、「いえ、別に…」と、しょうもないリアクションをしてしまい、結局みんなとの距離は縮まらないのでした…
♪今日の一曲
Magic Music / 木村カエラ